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ベンチャー企業の広告エンジニアのブログ

広告の基本 - ターゲティング

はじめに

今回は,広告の収益性を高めるために重要な位置付けとなるターゲティングの各手法についてまとめたいと思います.

ターゲティングとは?

ターゲティングとは,ユーザと広告のマッチングです. つまり,ユーザと相性の良い広告を見つけることです.相性が良いとは,興味を持ちやすくクリックやコンバージョンをしやすい(=効果の良い広告)ということになります.

直感的な例を示します.

あなたがより良い効果の広告を,どこかの知らない人に見せたいと思ったときにどちらの広告を選ぶでしょうか?

(1) 化粧品の広告

(2) ゲームアプリの広告

選べない人が多かったのではないでしょうか?あなたは,その人がどんな人なのかを知らないからです.

それでは,ある人が実は男性だと分かりました.その場合はどうでしょうか?

おそらく,殆どの人は(2)を選択したはずです.男性の場合,一般的に化粧品よりもゲームアプリに興味を持つ場合が多いからです.

ですが,実はその男性があるショッピングサイトで,同じ種類の化粧品をカートに入れたけれど購入していなかったことが分かりました.その場合はどうでしょうか?

今度は,(1)を選択するはずです.

このように,ユーザの情報を集めて,より興味を持ちやすいと思われる広告を選択する手法がターゲティングです.

ターゲティングの種類

ターゲティングには,行動履歴やユーザの属性を使うものなど様々な手法が存在しています.

今回はその中でも代表的なものとして以下の手法を解説していきます.

  • リターゲティング
  • 属性ターゲティング
  • オーディエンスターゲティング
  • コンテンツターゲティング

リターゲティング

リターゲティングとは,広告主のサイトの閲覧履歴のあるユーザに,閲覧した商品と関連する広告を配信したり,検索エンジンで検索したワードに関連する広告を配信するものです.

サイトの閲覧履歴を使うものをサイトリターゲティング,検索エンジンを使うものサーチリターゲティングと呼びます.

例えば,ショッピングサイトで化粧品を閲覧したユーザにその化粧品の広告を出したり,検索エンジンでゲームアプリを検索したユーザにそのゲームアプリの広告を出すといったものです.

最近では,アプリをインストールした後に一定期間起動していないユーザに対してターゲティングを行うリエンゲージメント広告もリターゲティングの一種とされています.

この手法の利点は,購買意欲が高いユーザを厳選できるため,クリックやコンバージョンされやすく効果が高い点です.(リターゲティングを導入することでCVRが数倍になるケースも存在します)

欠点は,閲覧履歴や検索履歴があるユーザにしぼられるため配信ボリュームが出ない場合があるという点です.また,カートに商品を入れていたようなユーザは広告を出さなくても購入していた可能性もあり,効果が過度に評価されることもあります.さらに,しつこく同じ商品が出続けることも多いため,ユーザに嫌悪感を与えてしまう可能性もあります.

属性ターゲティング

ユーザの年齢,性別といった情報(デモグラフィックデータ)を元にクリックしやすそうな広告を配信することを,属性ターゲティングと呼びます.

属性情報は以下のようなものがあります.

  • 年齢
  • 性別
  • 地域
  • 所得
  • 職業

こういった情報を使うことで,育毛剤の広告を40代以上の男性に配信したり,東京の賃貸マンションの広告を東京に住んでいるユーザに配信したりするといったことが可能になります.地域データを使う場合は,ジオグラフィックターゲティングと呼ばれます.

また,近年では,ユーザのリアルタイムの位置情報を取得して,付近に存在する店の広告を配信する技術も存在しています(この分野のことはO2Oと呼ばれています).

これらのユーザの属性は,例えばFacebookなどのSNSで入力されたプロフィール情報を使用したり,アンケートなどから取得する場合もあります. 現状では,CookieやデバイスID(IDFAやAdvertisingID)とそれらの属性情報を紐づけることで,ターゲティングを実現しています.

利点は,直感的であるため,広告主自身が配信設定できる場合が多いことや,リターゲティングなどと比較して配信ボリュームを出しやすい点が挙げられます.

欠点は,属性情報だけでは広告に関心があるかを判断できない場合が多いことや,属性情報を取得してユーザと紐付けることが難しいことなどが挙げられます.

オーディエンスターゲティング

ユーザのオンライン上での行動履歴などから効果の良い広告を配信することを,オーディエンスターゲティングと呼びます.

例を示します.EC2サイトやブログなど複数のサイトに股がってユーザの行動履歴を収集し,その行動履歴に従ってユーザをいくつかのグループに分割します.それらのグループごとに興味があると思われる広告を配信する手法です.

このグループは,例えばファッションに興味のあったり,あるいはスポーツに興味のあるグループなど,粒度は様々ですが,あるものに関心のあるユーザをまとめたものになります.このグループのことを,一般的にセグメントと呼びます.

この手法は,リターゲティングや属性ターゲティングと併せて活用されることもあります.

利点は,リターゲティングと比較して,オンライン上での行動履歴を横断できるので直近のユーザの欲求を反映できることです.

欠点は,配信ボリュームが出ない場合があることや,複数のシステムの連携が必要になるため複雑になることが多い点です.

コンテンツターゲティング

コンテンツターゲティングとは,Webコンテンツに併せた広告を配信するターゲティング手法です.

例えば,料理のブログに,そこで紹介されている調味料の広告を出すことでユーザの興味を引くといったものになります.

Webコンテンツを予め解析しておき,文字列やタグ情報から類似度の高い広告を配信することで実現します.

利点は,サーチリターゲティングと相性が良いため組み合わせることで高い効果を得られやすいという点です.

欠点は,予めコンテンツを解析する必要性があることや,同じページに来るユーザでも興味が違う場合も多いため,リターゲティングと比較して効果が得られにくいという点です.

ターゲティングは万能ではない

ターゲティングは,ユーザに興味がありそうな広告を選択して配信できるため,うまくハマった場合には高い効果が得られやすいです.そのためか,過剰にターゲティング手法にスポットライトが当てられているという感覚があります.

しかし,ターゲティングは実際のところ,広告配信可能なユーザに対して配信可能な広告の中から最適と思われるものを選択する,ということに過ぎません.

つまり,広告配信可能なユーザの数が少なかったり,配信可能な広告の数が少ないと,精度が高かったとしても,「配信ボリュームが全然出ない」「最適な広告が存在しない」,というケースが往々にして存在します.

広告ユーザ数を確保することや広告数を確保することは,ターゲティングの精度を高めること以上に効果に重要な影響を及ぼす場合が多いため,ターゲティング手法にとらわれず,まずはユーザ(枠)や広告数の確保に力を入れることが必要だと感じています.

おわりに

今回は,ターゲティング手法についてまとめました.

それぞれの手法に,利点や欠点が存在するため,配信可能ユーザや配信可能広告数を考慮して最適な手法を選択する必要があるかと思います.